はじめに
収益性分析とは、企業がどれだけ利益を上げているのかを分析する手法です。企業は、売上から費用を差し引いて利益を上げます。収益性分析では、売上高、費用、利益の3つの要素を分析することで、企業の収益性を把握することができます。
収益性分析を行うことで、以下のメリットを得ることができます。
- 企業の収益性の実態を把握することができる
- 収益性の向上に向けた改善策を検討することができる
- 競合他社との比較を行うことができる
収益性分析の代表的な指標は、以下のとおりです。
売上高総利益率
売上高から売上原価を差し引いた総利益を売上高で割った割合
売上高営業利益率
売上高から売上原価と販売費及び一般管理費を差し引いた営業利益を売上高で割った割合
売上高経常利益率
売上高から売上原価、販売費及び一般管理費、営業外損益を差し引いた経常利益を売上高で割った割合
売上高当期純利益率
売上高から売上原価、販売費及び一般管理費、営業外損益、特別損益を差し引いた当期純利益を売上高で割った割合
これらの指標を比較することで、企業の収益性の強みや弱みを把握することができます。
収益性分析を行う際には、以下の点に注意が必要です。
- 比較対象とする企業を明確にする
- 業種や規模による違いを考慮する
- 数値の裏にある原因を分析する
収益性分析を活用することで、企業は収益性の向上に向けた改善策を検討することができます。収益性を向上させることで、企業の競争力や収益力は向上します。
具体的には、以下の改善策が挙げられます。
- 売上を増やす
- 費用を削減する
- 収益構造を改善する
収益性分析は、企業経営において重要な分析手法です。収益性分析を活用して、企業の収益性を向上させましょう。
収益性分析の具体的な活用方法について
以下に、収益性分析の具体的な活用方法をご紹介します。
経営戦略の立案
収益性分析を活用することで、企業の強みや弱みを把握することができます。この情報をもとに、経営戦略を立案することができます。
事業計画の策定
収益性分析を活用することで、事業計画の目標設定や達成可能性を検討することができます。
経営改善
収益性分析を活用することで、収益性の向上に向けた改善策を検討することができます。
各指標の説明について
売上高総利益率
売上高総利益率は、売上高から売上原価を差し引いた総利益を売上高で割った割合です。売上原価は、商品やサービスの製造・販売に直接的にかかわる費用です。売上高総利益率は、商品やサービスの原価と販売価格の差を示す指標です。
売上高営業利益率
売上高営業利益率は、売上高から売上原価と販売費及び一般管理費を差し引いた営業利益を売上高で割った割合です。販売費及び一般管理費は、売上高を上げるために直接的にかかわる費用以外の費用です。売上高営業利益率は、本業における収益力を示す指標です。
売上高経常利益率
売上高経常利益率は、売上高から売上原価、販売費及び一般管理費、営業外損益を差し引いた経常利益を売上高で割った割合です。営業外損益は、本業以外の活動によって発生した損益です。売上高経常利益率は、本業を含む企業全体の収益力を示す指標です。
売上高当期純利益率
売上高当期純利益率は、売上高から売上原価、販売費及び一般管理費、営業外損益、特別損益を差し引いた当期純利益を売上高で割った割合です。特別損益は、本業や営業外活動以外の活動によって発生した損益です。売上高当期純利益率は、企業全体の収益力を示す指標です。
各指標の使い分けについて
これらの利益率を使い分ける際には、以下の点に注意が必要です。
比較対象とする企業を明確にする
利益率は、業種や規模によっても大きく異なります。そのため、比較対象とする企業を明確にして、適切な比較を行う必要があります。
数値の裏にある原因を分析する
利益率は、企業の収益力を示す指標ですが、その数値の裏にはさまざまな原因が考えられます。利益率を改善するためには、数値の裏にある原因を分析する必要があります。
具体的な使い分けとしては、以下のとおりです。
- 売上高総利益率は、商品やサービスの価格設定や原価管理の改善に活用できます。
- 売上高営業利益率は、販売費及び一般管理費の削減や新商品・新サービスの開発に活用できます。
- 売上高経常利益率は、財務活動の改善や投資活動の効率化に活用できます。
- 売上高当期純利益率は、企業の経営戦略の評価や投資判断に活用できます。
このように、それぞれの利益率には、異なる目的や活用方法があります。企業の状況や目的に合わせて、適切な利益率を活用することが大切です。
以下に、具体的な活用例をご紹介します。
売上高総利益率が低い場合
売上高総利益率が低い場合、商品やサービスの価格設定が適切でない可能性があります。また、原価管理が不十分な可能性もあります。このような場合には、商品やサービスの価格設定の見直しや、原価管理の改善を検討する必要があります。
売上高営業利益率が低い場合
売上高営業利益率が低い場合、販売費及び一般管理費が過大な可能性があります。このような場合には、販売費及び一般管理費の削減を検討する必要があります。
売上高経常利益率が低い場合
売上高経常利益率が低い場合、財務活動や投資活動に問題がある可能性があります。このような場合には、財務活動や投資活動の改善を検討する必要があります。
売上高当期純利益率が低い場合
売上高当期純利益率が低い場合、企業全体の収益力が低い可能性があります。このような場合には、経営戦略の見直しや投資判断の見直しを検討する必要があります。
各指標の参考値について
経済産業省の「企業活動基本調査」によると、2020年度の各業種の売上高総利益率、売上高営業利益率、売上高経常利益率、売上高当期純利益率は、以下のとおりです。
* 小売業
売上高総利益率30.3%、売上高営業利益率9.6%、売上高経常利益率5.3%、売上高当期純利益率2.4%
* 製造業
売上高総利益率55.9%、売上高営業利益率11.7%、売上高経常利益率7.9%、売上高当期純利益率4.4%
* サービス業
売上高総利益率31.6%、売上高営業利益率9.5%、売上高経常利益率5.5%、売上高当期純利益率2.6%
企業事例について
背景
ある製造業企業は、近年の競争激化により、収益性が低下していました。そこで、収益性分析を行い、改善策を検討することになりました。
内容j
財務内容について
- 業種:製造業
- 売上高:100億円
- 売上原価:60億円
- 販売費及び一般管理費:30億円
- 営業利益:10億円
- 経常利益:8億円
- 当期利益:5億円
- 改善の必要のある項目:売上高営業利益率
各指標の算出
- 売上高総利益率:40%
- 売上高営業利益率:10%
- 売上高経常利益率:8%
- 売上高当期純利益率:5%
各指標を元にした企業評価
売上高総利益率は、業種平均である55.9%を下回っており、改善の余地があります。売上高営業利益率は、業種平均である11.7%を下回っており、収益性が低いと言えます。売上高経常利益率は、業種平均である7.9%を下回っており、改善が必要です。売上高当期純利益率は、業種平均である4.4%を下回っており、収益性が低いと言えます。
改善の方向性
売上高営業利益率を改善するためには、販売費及び一般管理費の削減が有効です。具体的には、以下のような改善策が考えられます。
- 人件費の削減
- 広告宣伝費の削減
- 物流費の削減
また、売上高総利益率を改善するためには、原価管理の改善が有効です。具体的には、以下のような改善策が考えられます。
- 原材料費の見直し
- 製造工程の効率化
- 在庫管理の改善
今回の分析の結果、売上高営業利益率と売上高総利益率が低いことが明らかになりました。これらの指標を改善するためには、販売費及び一般管理費の削減と原価管理の改善が有効です。具体的な改善策を検討し、収益性の向上に努めることが重要です。
なお、この事例はあくまでも一例であり、企業の状況や目的によっても、適切な改善策は異なります。収益性分析を行う際には、企業ごとに適切な分析を行うことが大切です。
まとめ
収益性分析とは、企業の収益力を示す指標を分析する手法です。売上高総利益率、売上高営業利益率、売上高経常利益率、売上高当期純利益率などの指標を用いて、企業の収益性を評価することができます。
収益性分析を行うことで、以下のメリットを得ることができます。
- 企業の収益性の実態を把握することができる
- 収益性の向上に向けた改善策を検討することができる
- 競合他社との比較を行うことができる
収益性分析を行う際には、以下の点に注意が必要です。
- 比較対象とする企業を明確にする
- 業種や規模による違いを考慮する
- 数値の裏にある原因を分析する
収益性分析は、企業経営において重要な分析手法です。収益性分析を活用して、企業の収益性向上に役立てましょう。