条文
第11条(安全管理者)
事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、安全管理者を選任し、その者に前条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち安全に係る技術的事項を管理させなければならない。
2 労働基準監督署長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、事業者に対し、安全管理者の増員又は解任を命ずることができる。
本条について
安全管理者は、法定の業種で常時50 人以上の労働者を使用する事業場ごとに、安全管理者の資格を有する者から選任しなければなりません。
安全管理者は事業場に専属の者から選任しなければなりませんが、 2人以上の安全管理者を選任する場合で、安全管理者のなかに労働安全コンサルタントが選任されている場合には、労働安全コンサルタントのうちの1人については専属でなくても差し支えありません。
また、業種の区分に応じた事業場規模では、安全管理者のうち少なくとも一人を専任の安全管理者とすることが必要です。
なお、特殊化学設備を備える事業場で、都道府県労働局長が指定した場合には、都道府県労働局長が指定する生産施設単位ごとに、必要な数の安全管理者を選任しなければなりません。
安全管理者の選任が必要な業種について
常時50人以上の労働者を使用する事業場で、安全管理者の選任が必要な業種は以下のとおりになります。
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む。) 、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業
選任人数について(昭41.1.22基発46号)
選任すべき安全管理者の人数については、一般的な規定は設けられていません。しかしながら、事業場の規模、作業の態様などの実態に即して、必要な場合には2人以上の安全管理者を選任するように努めなければなりません。
安全管理者の専属について
安全管理者は、その事業場に専属の者を選任しなければなりません。なお、2人以上の安全管理者を選任する場合で、その中に労働安全コンサルタントがいる時は、当該労働安全コンサルタントのうち一人については、専属である必要はありません。
これは、安全管理者のうち一人は外部委託ができるとする規定になります。ただし、その者は労働安全コンサルタントである必要があります。
事業者の分社化について(平18.3.31基発331005)
親事業者の分社化に伴い、当該事業者の事業場の一部が分割された子事業者の事業場であって、双方の事業場が同一敷地内にある、又は敷地が隣接しており、さらに安全衛生管理が相互に密接に関連して行われているなどの要件を満たすときは、親会社の安全管理者等が子事業者の事業場の安全管理者などを兼ねる場合には、それぞれ、事業場に専属の者を選任しているものと認められます。
専属と専任について
専属の者とは、その事業場のみに勤務する者をいいます。
専任の者とは、通常の勤務を専ら当該業務として行うために費やす者をいいます。
専任の安全管理者とすべき業種と事業場規模について
専任の安全管理者とすべき業種と事業場規模は以下のとおりになります。
業種 | 常時使用する労働者数 |
建設業、有機化学工業製品製造業、石油製品製造業 | 300人以上 |
無機化学工業製品製造業、化学肥料製造業、道路貨物運送業、港湾運送業 | 500人以上 |
紙・パルプ製造業、鉄鋼業、造船業 | 1,000人以上 |
選任が必要な業種で上記以外のもの ただし、過去3年間の労働災害による休業1日以上の死傷者数の合計が100人を超える事業場に限る | 2,000人以上 |
安全管理者の資格について
安全管理者として選任できるのは1から3に該当する者です。
1.以下の①~⑥のいずれかに該当する者で、厚生労働大臣が定める研修(安全管理者選任時研修)を修了したもの
①学校教育法による大学、高等専門学校における理科系統の正規の課程を修めて卒業した者で、その後2年以上産業安全の実務に従事した経験を有するもの
②学校教育法による高等学校、中等教育学校において理科系統の正規の学科を修めて卒業した者で、その後4年以上産業安全の実務に従事した経験を有するもの
③学校教育法による大学、高等専門学校における理科系統の課程以外の正規の課程を修めて卒業した者で、その後4年以上産業安全の実務に従事した経験を有するもの
④学校教育法による高等学校、中等教育学校において理科系統の学科以外の正規の学科を修めて卒業した者で、その後6年以上産業安全の実務に従事した経験を有するもの
⑤7年以上産業安全の実務に従事した経験を有するもの
⑥その他(職業訓練課程修了者関係)
2.労働安全コンサルタント
3.そのほか、厚生労働大臣が定める者
安全管理者の職務について
①安全管理者は、総括安全衛生管理者が行う業務(安衛法第25条の2第2項により技術的事項を管理する者を選任した場合はその範囲を除く)のうち安全に係る技術的事項を管理することが必要です。
②安全管理者は、作業場等を巡視し、設備、作業方法等に危険のおそれがあるときは、直ちにその危険を防止するため必要な措置を講じなければなりません。
③安全管理者が行うべき安全に関する措置とは、具体的には次のような事項をいいます。
1. 建設物、設備、作業場所または作業方法に危険がある場合における応急措置または適当な防止の措置
2. 安全装置、保護具その他危険防止のための設備・器具の定期的点検および整備
3. 作業の安全についての教育および訓練
4. 発生した災害原因の調査および対策の検討
5. 消防および避難の訓練
6. 作業主任者その他安全に関する補助者の監督
7. 安全に関する資料の作成、収集および重要事項の記録
8. その事業の労働者が行う作業が他の事業の労働者が行う作業と同一の場所において行われる場合における安全に関し、必要な措置
④事業者は安全管理者に対し、安全に関する措置を行う権限を与えなければなりません。
安全管理者の選任手続きについて(則4条1項1号及び2項)
事業者は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に安全管理者を選任しなければならず、遅滞なく、報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。
安全管理者が旅行、疾病、事故その他やむを得ない事由によって職務を行うことができないときは代理者を選任しなければなりません。
行政措置について
労働基準監督署長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、事業者に対し、安全管理の増員又は解任を命ずることができます。