ノーレイティング制度とは
「ノーレイティング」は、評価を行わないことではなく、ランク付けしない新しい人事評価制度のことです。従来のように従業員を期末や年度末に「S」「A」「B」「C」といったランク付け(レイティング、rating)するのではなく、リアルタイムの目標設定とフィードバックを実施する中で、その都度評価を行います。
ノーレイティング制度は、ビジネス環境が急速に変化する時代の中で、従来の人事評価制度の問題点を解決するものとして、多くの企業が関心を示しています。具体的な問題点としては以下のようなものがあります:
- 個性的な優秀な従業員が評価されない
- 大多数の従業員のモチベーションが上がりにくい
- 従業員の成長が阻害される可能性がある
- 評価がワンテンポ遅れる
これらの問題を解決するために、ノーレイティング制度では以下のような原則があります:
- リアルタイム:必要なときにリアルタイムで目標設定やフィードバックを行う
- 未来志向:過去の評価をするだけでなく、未来に向けた成長を意識したフィードバック面談を行う
- 個人起点:個人起点で変化に合わせて目標設定を繰り返しながら、そこに企業の目標も織り込んでいく
- 強み重視:個々の強みや特性を重視した評価を行う
また、ノーレイティング制度では、上司と部下が日頃から面談を行い、コミュニケーションを取りながら目標設定と進捗度の確認を行います。具体的には、上司と部下がonなどの面談で目標を設定し、週単位など頻繁に進捗を確認します。これにより、従業員は現在の行動をいち早く見直し、次の行動に移ることができます。また、上司と部下でのonの対話では、短期的な目標だけでなく、キャリアプランなど中長期的な目標についても話し合うことが必要とされています。
このように、ノーレイティング制度は従来の評価制度とは異なり、リアルタイムに目標設定が可能であり、柔軟性と個々の成長を重視した新しい評価方法と言えます。
ノーレイティング制度の成り立ち
ノーレイティング制度が注目されるきっかけは、従来の人事評価制度が抱える課題点や、レイティングによる人材管理に限界を感じる企業の増加と考えられます。また、ビジネス環境が急速に変化する中で、変化への迅速な対応が求められていることも一因とされています。
ノーレイティング制度の成り立ちは、ビジネススピードや仕事の進め方の変化、従業員同士でコラボレーションする機会の増大などの背景から、ノーレイティングという考え方がアメリカで生まれました。
ノーレイティングでは、過去の成果を振り返って「あの時はこうすべきだった」という評価を行うのではなく、「今どうするべきか」「これからどうしたらよいか」といった現状・未来志向の相談ができるため、従業員は現在の行動をいち早く見直し、次の行動に移ることができます。
米ゼネラル・エレクトリック(GE)が人事評価の枠組みである「9 ブロック」を廃止するなど、海外の先進的企業の間では、従来型の評価制度を見直す機運が高まっています。その後、日本でもその考えを取り入れる企業が出始めており、近年注目を集めています。
ノーレイティング制度のメリット
ノーレイティング制度のメリットは以下の通りです:
- 双方が納得できる目標設定・評価が可能:
上司と部下が常に擦り合わせているため、双方で納得のいく評価になりやすいです。また、評価する側の立場では、これまでは相対評価で誰かに必ずC評価を付けなければならないなどのケースもあったかと思います。しかしノーレイティングではランク付けを廃止しているため、マネージャーの裁量により給与は決定されます。 - 上司・部下のコミュニケーションの活性化:
ノーレイティング制度では評価日の設定はせずに、常日頃の業務を通じてフィードバックが行われるため上司と部下の密なコミュニケーションが生まれます。 - 優秀な人材の採用と離職率の低下:
従業員が数字での評価に捉われることなく、自己成長や貢献度、スキルセットなどを重視した評価ができるようになります。 - リアルタイムの目標と市場への迅速な対応:
目標設定や行動目標なども状況に応じて随時変わる事もあります。期を待たずに都度フィードバックをもらえるため、軌道修正も含めて双方が納得のできる目標となるだけでなく、会社側にとっても外的要因にすぐに反応できるため生産性も上がります。 - 社員のモチベーションを高めやすい:
ノーレイティング制度は、社員一人一人が成長する人事制度を構築しました。
ノーレイティング制度のデメリット
ノーレイティング制度のデメリットは以下の通りです:
- 管理職の負担増加:
ノーレイティング制度では、各社員とのミーティングを定期的に行う必要があります。これにより、管理職の負担は大きく増えます。 - 高いマネジメント能力が求められる:評価者である管理職のマネジメント能力に依存する可能性があります。管理職にマネジメント能力がない場合、部下からの信頼が失われるケースもあります。
- 現場が混乱する可能性:目標や目的を頻繁に変えることで、メンバーが混乱してしまう可能性もあります。
- 公平な評価制度の設計・構築が必要:昇給や昇格について、管理職が公平に判断を下せるような制度を設計しなければならない。
- 全ての企業に適しているわけではない:ノーレイティング制度は全ての企業に適しているわけではありません。企業の規模や業種、組織文化などによっては、従来の評価制度の方が適している場合もあります。
ノーレイティング制度と従来の評価制度(レイティング)との違い
ノーレイティング制度と従来の評価制度(レイティング)との違いは以下の通りです。
- 評価基準:
レイティングでは、社員の能力や成果を定量的に測定し、数値やランクなどで表します。一方、ノーレイティングでは、社員の能力や成果を定量的に測定しないか、あるいは測定しても評価に反映させません。 - 評価目的:
レイティングでは、社員の優劣や強弱を明確にすることで、給与や昇進などの人事処遇に反映させることが目的です。一方、ノーレイティングでは、社員の優劣や強弱を明確にしないことで、社員の成長や学習を促進することが目的です。 - 評価タイミング:
レイティングでは、年度末や半期末などの決まった時期に一括して行います。一方、ノーレイティングでは、随時や頻繁に行います。 - 評価方法:
レイティングでは、上司や同僚などの第三者が社員を評価します。一方、ノーレイティングでは、自己評価や相互評価などの第一者や第二者が社員を評価します。 - 評価内容:
レイティングでは、過去の業績や行動などの結果を評価します。一方、ノーレイティングでは、現在の課題や目標などのプロセスを評価します。
以上のように、ノーレイティング制度は従来の評価制度とは異なり、柔軟性と個々の成長を重視した新しい評価方法と言えます。
まとめ
ノーレイティング制度は、評価を行わないことではなく、ランク付けしない新しい人事評価制度のことです。従来のように従業員を期末や年度末に「S」「A」「B」「C」といったランク付け(レイティング、rating)するのではなく、リアルタイムの目標設定とフィードバックを実施する中で、その都度評価を行います。
ノーレイティング制度は、ビジネス環境が急速に変化する時代の中で、従来の人事評価制度の問題点を解決するものとして、多くの企業が関心を示しています。具体的な問題点としては以下のようなものがあります:
- 個性的な優秀な従業員が評価されない
- 大多数の従業員のモチベーションが上がりにくい
- 従業員の成長が阻害される可能性がある
- 評価がワンテンポ遅れる
これらの問題を解決するために、ノーレイティング制度では以下のような原則があります:
- リアルタイム:必要なときにリアルタイムで目標設定やフィードバックを行う
- 未来志向:過去の評価をするだけでなく、未来に向けた成長を意識したフィードバック面談を行う
- 個人起点:個人起点で変化に合わせて目標設定を繰り返しながら、そこに企業の目標も織り込んでいく
- 強み重視:個々の強みや特性を重視した評価を行う
このように、ノーレイティング制度は従来の評価制度とは異なり、柔軟性と個々の成長を重視した新しい評価方法と言えます。
具体的な事例としては、ソフトウェア開発大手のアドビシステムズでは上司と部下のリレーションシップを通じて社員一人一人が成長する人事制度を構築しました。また、ノーレイティングの導入により「これからもこの企業で働きたい」という意欲に繋がり、離職率が大幅に低下した事例もあります。
以上がノーレイティング制度についてのまとめです。この新しい評価方法は、企業文化や組織風土によって効果が異なるため、導入する際は十分な検討が必要です。