労働基準法 第37条5項(1時間当たりの賃金の計算方法の計算について)

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割増賃金額の計算方法について

使用者は、労働者に時間外労働、休日労働及び深夜労働を行わせた場合には、法令で定める割増率以上の率で算定した割増賃金を支払わなければなりません。
この割増賃金額は以下のように算出することができます。。

割増賃金額=1時間当たりの賃金額×時間外労働、休日労働、または深夜労働を行わせた時間数×割増賃金率

また、月給制の1時間当たりの賃金額は以下のとおりに計算します。

月の所定賃金額÷1か月の(平均)所定労働時間数

したがって、例えば、所定労働時間:8時間、労働日:245日、月の所定賃金額:300,000円とした場合の計算は以下のようになります。

300,000円÷(8時間×245日÷12か月)=1836.73…
1836.73…×1.25=2,295.91…
割増賃金額=2,296円

●端数処理について
1時間あたりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げ

「割増賃金の基礎となる賃金」から除外できるもの

割増賃金の基礎となるものは、所定労働時間の労働に対して支払われる「1時間当たりの賃金額」になります。そのため、月給制の場合は、各種手当も含めた月給を1か月の所定労働時間で割ることで、1時間当たりの賃金額を算出します。

ただし、以下については、労働と直接な関係が薄いことや個人的事情に基づいて支給されていることなどにより、賃金の基礎から除外することできます。

①家族手当
②通勤手当
③別居手当
④子女教育手当
⑤住宅手当
⑥臨時に支払われた賃金
⑦1か月を超える期間がごとに支払われる賃金

この①~⑦は、例示ではなく限定列挙になります。したがって、これらに該当しない場合は、すべて算入する必要があります。

また、①~⑤の手当については、その名称であればすべて賃金の基礎から除外できるものではありません。

除外できる手当の具体的な範囲について

手当については、その名称であればすべて割増賃金の基礎となる賃金から除外できるものではありません。具体的な例示としては以下が考えられます。

家族手当

割増賃金の基礎から除外できる家族手当は、扶養家族の人数またはこれを基礎とする家族手当額を基準として算出した手当をいいます。

●除外できる例
扶養家族のある労働者に対し、家族の人数に応じて支給する場合は除外できます。
例えば、扶養義務のある家族につき、1か月当たり配偶者1万円、子に5千円を支給する場合などが該当します。

●除外できない例
扶養家族の有無、家族の人数に関わらず一律に支給する場合は除外できません。
例えば、扶養家族の人数に関係なく、一律1か月1万5千円を支給する場合などが該当します。

通勤手当

割増賃金の基礎から除外できる通勤手当は、通勤距離または通勤に要する実際費用に応じて算定される手当をいいます。

●除外できる例
通勤に要した費用に応じて支給される場合は除外できます。
例えば、6か月定期券の金額に応じた費用を支給する場合が該当します。

●除外できない例
通勤に要した費用や通勤距離に関係なく一律に支給する場合は除外できません。
例えば、実際の通勤距離に関係なく、一律で1日500円を支給する場合などが該当します。

住宅手当

割増賃金の基礎から除外できる住宅手当とは、住宅に要する費用に応じて算定される手当をいいます。

●除外できる例
住宅に要する費用に低率を乗じた額を支給する場合は除外できます。
例えば、賃貸住宅居住者には、家賃の一定割合、持ち家居住者にはローン月額の一定割合を支給する場合等が該当します。

●除外できない例
住宅の形態ごとに一律に定額で支給する場合は除外できません。
例えば、賃貸住宅居住者には2万円、持ち家居住者には1万円を支給するといった一律で支給する場合が該当します。

賞与の取り扱いについて

賞与は、一般的に、その金額が労働者の成績等の要因により額が変化することで金額が確定しておらず、また、1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金に該当するため、割増賃金の算定の基礎には含めません。

しかしながら、年俸制などで毎月払い部分と賞与部分を合計してあらかじめ年俸額が確定している場合については、注意が必要になります。

行政解釈においては、あらかじめ年俸額が確定している場合の賞与は、割増賃金の基礎となる賃金から除外できる賃金に該当しない(平成12年3月8日基収78号)としています。そのため、あらかじめ賞与が確定している場合は、その部分を含めて割増賃金を計算する必要があります。

また、割増賃金に相当する額を年俸に含めて支払うこともできますが、この場合にも、実際の労働時間が年間の割増賃金に相当する時間数を超えるときは、その部分について、別途割増賃金を支払わなければなりません(平成12年3月8日基収78号)。

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この記事を書いた人

人事系コンサルで頑張っている者です。
毎日全力で突っ走ってます!!

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