従業員が10人を超えたら会社は何が変わる?就業規則・安全衛生・労働時間の3つを確認

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「最近パートさんも増えて、気づいたら従業員10人以上に。会社として何か新しい義務ってあるの?」

会社が少しずつ大きくなってくると、こんな疑問が出てきます。結論から言うと、パートやアルバイトも含めて、1つの事業場で常時10人以上になると、会社のルールづくりと安全衛生の体制づくりが義務になります。

この記事では、10人を超えたときに変わる3つのことと、人数の数え方、そして10人とは関係なく1人目から必要なことを整理します。

この記事の結論
  • 事業場ごとに常時10人以上(パート・アルバイトを含む)になると、就業規則の作成と届出が必要です
  • 同時に、安全衛生推進者(衛生推進者)を選ぶ義務が生まれます
  • 商業・飲食・医療福祉などは週44時間の特例が使えなくなり、週40時間になります
目次

従業員10人以上で増える義務(早見表)

常時10人以上になったときに変わる主なことは、次の3つです。

スクロールできます
変わること会社がやることいつまでに
就業規則作成して労働基準監督署に届け出る10人以上になったら速やかに
安全衛生推進者(衛生推進者)事業場ごとに選び、氏名を職場に掲示する10人以上になってから14日以内
週44時間の特例(商業・飲食など)週40時間を前提にシフトや時間外労働を見直す10人以上になった時点から
従業員数で増える会社の義務の節目。1人からは労災・雇用保険、法人の社会保険、労働条件の明示、36協定、年5日の有休取得。10人で就業規則の作成・届出、安全衛生推進者の選任、商業・飲食などの週44時間特例の終了。37.5人で障害者を1人以上雇用。50人で衛生管理者・産業医の選任と衛生委員会、ストレスチェック。101人で一般事業主行動計画。

図のように、人数が増えるごとに会社の義務は段階的に増えていきます。10人は、その最初の大きな節目です。

「常時10人」はどう数える?

まず押さえておきたいのが数え方です。ここを間違えると、必要な手続きを見落としたり、逆にいらない心配をしたりすることになります。

パート・アルバイトも1人として数える

「常時10人」には、正社員だけでなく、パートやアルバイト、契約社員も含まれます。週に数日しか来ないパートさんでも、普段から働いている人なら1人です。

一方で、社長や役員は労働者ではないので数えません。繁忙期だけ来てもらう臨時の人も、「常時」使用しているとは言えないため、ふつうは数に入りません。

会社全体ではなく「事業場」ごとに数える

もう一つのポイントは、数える単位が会社全体ではなく、本社・支店・店舗などの事業場ごとだということです。

たとえば本社に8人、店舗に6人いる会社は、会社全体では14人でも、どちらの事業場も10人未満です。この場合、就業規則の届出義務はありません。

常時10人の数え方。正社員・パート・アルバイト・契約社員は数え、社長・役員、繁忙期だけの臨時の人、派遣社員(派遣元で数える)は数えない。数える単位は事業場で、本社8人と店舗6人なら会社全体で14人でもどちらも10人未満。

社会保険の適用拡大(パートさんの加入対象の拡大)は、事業場ごとではなく会社(法人)全体の人数で判断します。同じ「人数」でも制度によって数え方が違うので注意してください。くわしくは社会保険の適用拡大、うちはいつから?で解説しています。

こまる

店舗ごとに数えると10人未満という会社でも、就業規則は作っておくと安心です。ルールが文章になっていないと、トラブルのときに会社の考えを示す根拠がなくなってしまいます。

1. 就業規則を作って届け出る

常時10人以上の事業場では、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署に届け出る義務があります(労働基準法第89条)。内容を変えたときも、そのつど届出が必要です。

必ず書かなければならないこと

就業規則には、必ず書く項目が決まっています。主なものは次のとおりです。

  • 始業・終業の時刻、休憩、休日、休暇
  • 賃金の決め方と計算・支払いの方法、締め日と支払日、昇給
  • 退職に関すること(解雇の理由を含む)

このほか、退職金や賞与、安全衛生、表彰や懲戒などのルールを設ける場合は、それも書く必要があります。

作ったあとの流れ

就業規則は、作って終わりではありません。従業員の代表から意見を聴き、意見書を添えて届け出て、従業員に周知するところまでが会社の役目です。

就業規則を作るときの流れ。1作る、2従業員の過半数代表に意見を聴く、3意見書を添えて労働基準監督署に届け出る、4従業員に周知する。

届け出なかった場合は、30万円以下の罰金の対象になります。また、届け出ていても従業員に周知していなければ、その内容を労働条件として主張できないおそれがあります。作成・届出・周知の3つをそろえてください。

2. 安全衛生推進者(衛生推進者)を選ぶ

常時10人以上50人未満の事業場では、安全衛生推進者を選ぶ必要があります。業種によっては、衛生に関する業務だけを担当する「衛生推進者」を選びます。どちらになるかは業種で決まります。

選ぶ期限は、10人以上になってから14日以内です。労働基準監督署への報告はいりませんが、氏名を職場の見やすい場所に掲示するなどして、従業員に知らせる必要があります。

安全衛生推進者には、一定の実務経験や講習の修了などの要件があり、原則としてその事業場で働いている人から選びます。職場の危険の点検や健康診断の取りまとめなどを担うので、総務の担当者や店長など、職場の状況をよく知っている人に任せると回しやすくなります。

3. 週44時間の特例が使えなくなる(商業・飲食など)

労働時間の上限(法定労働時間)は、原則として1日8時間・週40時間です。ただし、常時10人未満の事業場で、次の業種に当てはまる場合は、特例として週44時間まで認められています。

  • 商業(卸売・小売・理美容・倉庫など)
  • 映画・演劇業
  • 保健衛生業(病院・診療所・社会福祉施設など)
  • 接客娯楽業(旅館・飲食店など)

この特例は、事業場の人数が10人以上になると使えなくなります。週44時間でシフトを組んでいた職場では、週40時間を超える分が時間外労働になります。

週40時間を超えて働いてもらうには、36協定の届出と割増賃金の支払いが必要です。人数が10人に近づいてきたら、シフトの組み方を先に見直しておくと慌てずにすみます。

人件費はどれくらい変わる?

週44時間で働いていた時給制のパートさんの場合、週40時間を超える4時間に25%以上の割増賃金がかかります。たとえば時給1,200円なら、1,200円×25%×4時間で週1,200円、月にするとおよそ5,200円です。

1人あたりでは大きな額ではありませんが、対象の人が5人いれば月2万6,000円、年間では30万円を超えます。シフトを週40時間に収めるか、割増賃金を払って今の時間を続けるか、人数と費用を並べて決めるのがおすすめです。

就業規則づくりも、専門家に依頼すれば費用がかかります。費用を抑えたい場合は、厚生労働省のモデル就業規則をたたき台にして、自社に合わない部分を直していく方法もあります。

10人とは関係なく、1人目から必要なこと

「10人を超えたら社会保険に入る」と思われていることがありますが、これは誤解です。次のことは人数に関係なく、従業員を1人でも雇ったら必要になります。

  • 労災保険と雇用保険の加入(雇用保険は週20時間以上などの条件あり)
  • 社会保険(健康保険・厚生年金)の加入(法人の場合)
  • 労働条件通知書などによる労働条件の明示
  • 残業や休日出勤をさせる場合の36協定の届出
  • 年10日以上の有給休暇がある人に、年5日を取得させること
  • 労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の作成と保存

法人なら、社長1人の会社でも社会保険の加入義務があります。個人事業の場合は、業種と人数(常時5人以上など)で加入義務が決まります。

経営の目線で考えたいこと

10人という人数は、経営の面でも一つの節目です。社長が全員の顔を見ながら、その都度決めていくやり方が、だんだん回らなくなってくる時期だからです。

就業規則を「守りの書類」で終わらせない

就業規則を届出のための書類と考えると、ひな形を写して終わりになりがちです。しかし、休暇や手当、評価のルールをはっきりさせることは、採用のときの説明や、従業員の安心感にもつながります。

特に、パートさんと正社員の違い(賃金・手当・休暇など)は、同一労働同一賃金の観点からも、理由を説明できるようにしておきたいところです。

こまる

「うちは家族的な会社だからルールはいらない」という声もあります。ただ、人が増えるほど口約束の食い違いは起きやすくなります。ルールを文章にしておくことは、従業員を守ることにもなります。

50人、そしてその先に向けて準備しておく

人数が増えると、次は50人で衛生管理者や産業医の選任、衛生委員会の設置が必要になります。パートさんの社会保険の適用拡大も、2027年10月からは36人以上の会社が対象です(くわしくはこちら)。

採用の計画を立てるときは、「何人になったら何が必要か」を先に把握しておくと、人件費や体制づくりの見通しが立てやすくなります。

使える無料の相談窓口

働き方改革推進支援センター

中小企業の労務管理の相談を無料で受け付けている窓口で、47都道府県にあります。就業規則の作り方や賃金規程の見直し、助成金の活用などについて、社会保険労務士などの専門家に相談できます。窓口・電話・メールのほか、専門家の訪問による支援もあります。

厚生労働省のモデル就業規則

厚生労働省が、就業規則の規程例と解説をまとめた「モデル就業規則」を公開しています。自社の実情に合わせて書き換えて使うことが前提ですが、何から書けばいいかわからないときのたたき台になります。

10人を超えたときのチェックリスト

  • 事業場ごとに、パート・アルバイトを含めた人数を数えた
  • 就業規則を作成した(または今の規則を見直した)
  • 従業員の過半数代表を選び、意見を聴いた
  • 意見書を添えて労働基準監督署に届け出た
  • 就業規則を従業員に周知した
  • 安全衛生推進者(衛生推進者)を14日以内に選び、氏名を掲示した
  • 商業・飲食などの場合、週40時間に合わせてシフトを見直した
  • 週40時間を超える場合は、36協定を届け出た

よくある質問

Q. 正社員5人とパート5人の会社は対象ですか?

A. 対象です。パートやアルバイトも人数に含めるので、同じ事業場で働いていれば10人になります。

Q. 社長や役員も人数に入りますか?

A. 入りません。数えるのは労働者なので、社長や役員は除きます。ただし、役員でも部長などを兼ねて給与を受けている人は、労働者として扱われる場合があります。

Q. 店舗が2つあり、それぞれ6人です。就業規則は必要ですか?

A. 事業場ごとに数えるので、届出の義務はありません。ただ、ルールがないとトラブルのときに会社の考えを示せないため、作成しておくことをおすすめします。

Q. 10人未満でも就業規則を作っていいですか?

A. 作ることができますし、労働基準監督署に届け出ることもできます。助成金の中には、就業規則の整備を前提にしているものもあるので、早めに整えておくと使える制度が広がります。

まとめ

パートやアルバイトも含めて、1つの事業場で常時10人以上になると、就業規則の作成・届出と、安全衛生推進者(衛生推進者)の選任が必要になります。商業や飲食などでは、週44時間の特例もなくなります。

10人は、会社が「人で回す」から「ルールで回す」へ切り替える節目です。まずは事業場ごとの人数を数えて、必要な準備を一つずつ進めてみてください。


参考にした公的情報
厚生労働省「モデル就業規則について」
宮崎労働局「就業規則の作成・届出について(よくあるご質問)」
厚生労働省「安全衛生推進者等の選任について」
徳島労働局「特例措置対象事業場」
厚生労働省「働き方改革推進支援センター」
日本年金機構「適用事業所と被保険者」
愛媛労働局「障害者の法定雇用率」
厚生労働省「労働安全衛生法等の一部の施行期日を定める政令案の概要」(ストレスチェック)
岐阜労働局「一般事業主行動計画の策定・届出」
e-Gov法令検索「労働基準法」

※この記事は2026年10月時点の公表情報をもとにした一般的な解説です。個別の事情によって取り扱いが異なる場合があるため、具体的な対応は労働基準監督署や専門家にご確認ください。

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この記事を書いた人

社労士・中小企業診断士。会社員として、コンサルティング会社で労務の相談を受けています。「法律上はこうです」とお伝えしても、それだけでは会社が動けない場面によく出会います。このサイトでは、その先の「で、うちはどうする?」まで書くようにしています。家では猫3匹と暮らしています。

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