安全衛生管理体制とは
労働安全衛生法では、事業場を一つの適用単位として、各事業場の業種、規模等に応じて、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者及び産業医の選任を義務づけています。なお、安全管理者、衛生管理者の選任を要しない労働者数 10 人から49人の事業場には、安全衛生推進者などの選任を義務づけています。
労第13条の2、労働安全衛生規則第15条の2においては、「産業医」の選任を要しない事業場にあっても、労働者の健康管理等を行う医師の選任、地域産業保健センター事業の利用等に努めるよう規定されています。
労働災害を防止するための管理を必要とする一定の作業について、各事業場の作業内容、規模等に応じて作業主任者の選任することや事業場を一つの適用単位として、各事業場の業種、規模等に応じて安全委員会、衛生委員会の設置することを義務づけています。
一般的な安全衛生管理体制

請負関係における安全衛生管理体制

安全管理者などの選任について
労働安全衛生法では、一定の規模以上の事業場において、安全衛生を管理する者の選任等を義務付けています。安全衛生管理活動を組織的、計画的、継続的、安定的に進めることで、労働災害を防止するため体制の確立する必要があります。
なお、安全管理者などは、業種、従業員数に応じて以下のとおり選任する必要があります。
※表中の○印は選任が義務付けられているものになります。△印はガイドラインに基づくものになります。
※安全管理者・衛生管理者については、事業場の業種、規模によって「専属の者を選任しなければならない場合」及び「複数人数を選任しなければならない場合」があります。
●製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、自動車整備業及び機械修理業
労働者数 | 総括安全衛生管理者 | 安全管理者 | 第1種衛生管理者 | 第2種衛生管理者 | 産業医 | 安全衛生推進者 | 衛生推進者 | 安全推進者 | 左記以外の担当者又は事業者 |
10人未満 | 〇 | ||||||||
10人以上50人未満 | 〇 | ||||||||
50人以上300人未満 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||||
300人以上 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
●鉱業、建設業、林業、運送業、清掃業
労働者数 | 総括安全衛生管理者 | 安全管理者 | 第1種衛生管理者 | 第2種衛生管理者 | 産業医 | 安全衛生推進者 | 衛生推進者 | 安全推進者 | 左記以外の担当者又は事業者 |
10人未満 | 〇 | ||||||||
10人以上50人未満 | 〇 | ||||||||
50人以上100人未満 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||||
100人以上 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
●農畜水産業、医療業
労働者数 | 総括安全衛生管理者 | 安全管理者 | 第1種衛生管理者 | 第2種衛生管理者 | 産業医 | 安全衛生推進者 | 衛生推進者 | 安全推進者 | 左記以外の担当者又は事業者 |
10人未満 | 〇 | ||||||||
10人以上50人未満 | 〇 | ||||||||
50人以上1,000人未満 | 〇 | 〇 | |||||||
1,000人以上 | 〇 | 〇 | 〇 |
●各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、通信業、旅館業、ゴルフ場業
労働者数 | 総括安全衛生管理者 | 安全管理者 | 第1種衛生管理者 | 第2種衛生管理者 | 産業医 | 安全衛生推進者 | 衛生推進者 | 安全推進者 | 左記以外の担当者又は事業者 |
10人未満 | 〇 | ||||||||
10人以上50人未満 | 〇 | ||||||||
50人以上300人未満 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||||
300人以上 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
●その他の業種(上記以外の小売業、社会福祉施設、飲食店など)
労働者数 | 総括安全衛生管理者 | 安全管理者 | 第1種衛生管理者 | 第2種衛生管理者 | 産業医 | 安全衛生推進者 | 衛生推進者 | 安全推進者 | 左記以外の担当者又は事業者 |
10人未満 | 〇 | ||||||||
10人以上50人未満 | 〇 | △ | |||||||
50人以上1,000人未満 | 〇 | 〇 | △ | ||||||
1,000人以上 | 〇 | 〇 | 〇 | △ |
安全管理者などの資格要件について
安全管理者等は、選任の事由が発生してから14日以内に選任し、「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告」に必要事項を記載の上、資格要件を証する書類を添付して、所轄の労働基準監督署(支署)へ提出しなければなりません。
また、安全衛生推進者又は衛生推進者についても、選任の事由が発生してから14日以内に選任しますが、事業場内の見やすい個所に氏名等を表示するなどにより労働者へ周知しなければなりません。
総括安全衛生管理者(労働安全衛生法第10条)
①事業場においてその事業を統括管理する者
統括管理とは、工場長等の名称の如何を問わず事業の実施について実質的な統括管理権限及び責任を有する者をいいます
安全管理者(労働安全衛生法第11条)
①大学等において理科系統の課程を卒業し、その後 2 年以上産業安全の実務経験を有するものであって安全管理者選任時研修を修了した者
②高校等において理科系統の課程を卒業し、その後4年以上産業安全の実務経験を有するものであって安全管理者選任時研修を修了した者
③その他厚生労働大臣が定める者
・大学等において理科系統以外の課程を卒業し、その後4年以上産業安全の実務経験を有するものであって安全管理者選任時研修を修了した者
・高校等において理科系統以外の課程を卒業し、その後6年以上産業安全の実務経験を有するものであって安全管理者選任時研修を修了した者
・7年以上産業安全の実務経験を有するものであって安全管理者選任時研修を修了した者
など
衛生管理者(労働安全衛生法第12条)
①衛生管理者(第 1 種、第 2 種)免許を有する者
②衛生工学衛生管理者免許を有する者
③医師
④歯科医師
⑤労働衛生コンサルタント
⑥その他厚生労働大臣が定める者
産業医(労働安全衛生法第13条)
①医師であって、産業医研修を修了した者
②労働衛生コンサルタント(保健衛生)試験に合格した者
③大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授又は常勤講師の職にあり、又はあった者
④その他厚生労働大臣が定める者
安全衛生推進者(労働安全衛生法第12条の2)
①安全衛生推進者等養成講習修了者
②大学等を卒業し、その後1年以上安全衛生の実務に従事した経験を有する者
③高校等を卒業し、その後3年以上安全衛生の実務に従事した経験を有する者
④5年以上安全衛生の実務に従事した経験を有する者
⑤厚生労働省労働基準局長が同等以上の能力を有すると認める者
衛生推進者(労働安全衛生法第12条の2)
①衛生推進者等養成講習修了者
②大学等を卒業し、その後1年以上衛生の実務に従事した経験を有する者
③高校等を卒業し、その後3年以上衛生の実務に従事した経験を有する者
④5年以上衛生の実務に従事した経験を有する者
⑤厚生労働省労働基準局長が同等以上の能力を有すると認める者
安全推進者(労働安全衛生法施行令第2条第3号に掲げる業種における安全推進者の配置等に係るガイドライン 平成26年3月28日付け基発0328第6号)
①職場内の整理整頓(4S活動)、交通事故防止等、業種の別に関わりなく事業所内で一般的に取り組まれている安全活動に従事した経験を有する者のうちから配置するものとする。
②常時使用する労働者が 50 人を超える事業場や労働災害を繰り返し発生させた事業場については、安全に対する知見を少しでも多く有する者を配置する観点から、以下の者を配置することが望ましい
(ア) 安全衛生推進者の資格を有する者(安全衛生推進者養成講習修了者、大学を卒業後1年以上安全衛生の実務を経験した者、5年以上安全衛生の実務を経験した者等)
(イ) (ア)と同等以上の能力を有すると認められる者(労働安全コンサルタントの資格を有する者、安全管理士の資格を有する者又は安全管理者の資格を有する者)