条文
第9条 (労働者)
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
労働者とは
労働者とは、指揮命令を受けて使用されるものであり、使用従属関係にあることをいいます。
なお、使用従属関係とは、使用者の指揮命令を受けて労働を提供し、その労働の対象として賃金が支払われる関係をいいます。
また、国内の事業で使用されるものであれば、日本人であるか外国人であるかを問わず、また、当該外国人が不法就労であるかを問わず、適用されます。
労働者の具体例
●労働者に該当する場合
① 業務執行権又は代表権を持たない法人の重役で、工場長・部長等の職にあって賃金を受ける者
② 請負契約によらず雇用契約により事業主との間に使用従属関係が認められる大工
③ 共同経営の事業において出資しながら、使用従属関係があり賃金を受けて働いている者
●労働者とならない者
①個人経営の事業主
②法人の代表者
③労働委員会の委員
④インターンシップにおける学生(使用従属関係が認められない場合)
●法人等の役員について
法人、団体、組合の代表者又は執行機関たる者の如く、事業主体との関係において使用従属関係に立たない者は労働者に該当しません。(昭和23年1月9日基発14号)
●学生について
インターンシップの労働者性については、インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり使用者からの業務に係る指揮命令を受けていると解されない等の使用従属関係が認められない場合には、本条に既定される労働者に該当しないものと考えられます。ただし、直接生産活動に従事する等当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生との間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当すると考えられます。(平成9年9月18日基発636号)
関西医科大学研修医事件 最高裁 平成17年6月3日判決
臨床研修は、医師の資質の向上を図ることを目的としており、教育的な側面を有しているが、病院において研修プログラムに従い、臨床指導医の指導の下に医療行為等に従事することを予定している。そして、研修医が当該医療行為について、病院の開設者のための労務の遂行を不可避的に有することとなり、病院の開設者の指揮命令の下にこれを行ったと評価することができる限り、当該研修医は労働基準法第9条の労働者に当たるものというべきである。
労働者に該当するか否か
働いている人であっても、個人事業主、会社の役員、請負契約や委任契約で働いている人など労働基準法上の労働者に該当しない人には、労働基準法の適用はありません。
ただし、労働者に該当するか否かは実体の判断とされており、契約の形式が請負や委任などとなっていても、実体的に労働関係が認められれば、労基法の適用がある労働者に該当します。労働基準法第9条では「この法律で「労働者』とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」と定義されており、労働者であるか否かは、基本的には、事業に「使用される者」であるか否か、その対償として「賃金」が支払われているか否かによって判断されます。
現実的にはこの判断が難しい場合があり、その場合には、労務提供の形態や報酬の労務対償性及びこれらに関連する諸要素をも勘案して総合的に判断することが必要です。 この基本的な判断基準は労働基準法研究会報告「労働基準法の『労働者』の判断基準について」(昭和60年12月19日)により整理されています。
使用従属性(労働者性)の判断
使用従属性(労働者性)の判断は、
①仕事の依頼、業務の指示等に対する諾否の自由の有無
②業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無
③勤務場所・時間についての指定・管理の有無
④労務提供の代替可能性の有無
⑤報酬の労働対償性
⑥事業者性の有無(機械や器具の所有や負担関係や報酬の額など)
⑦専属性の程度、
⑧公租公課の負担(源泉徴収や社会保険料の控除の有無)
等の諸要素を総合的に考慮して行われる。